n = 10,871人 2025年4月23日公表
🔍 令和6年度(第4回)全国調査 分析レポート

日本の孤独・孤立の実態
— 令和6年度データから読み解く現状と課題

本レポートは内閣府が実施した「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和6年・2024年実施)」の 集計データを多角的に分析し、最新の政策・研究情報と合わせて整理したものです。

📊 UCLA孤独感あり(7点以上)
0 %
約2人に1人が孤独感あり(尺度ベース)
📊 直接質問「たまに以上」
0 %
4回連続で約40%前後で横ばい
📊 社会活動「不参加」率
0 %
過半数が社会活動に参加していない
📊 完全孤立者(3サポートなし)
0 %
推計 約407万人(16歳以上人口換算)
🌐 年間孤独死(2024年・警察庁)
0
一人暮らし自宅死亡。うち65歳以上 5.8万人
📊 行政・NPO支援 受給率
0 % 程度
支援を必要とする人との大きなギャップ

1 調査の背景と位置づけ

2024年4月施行の「孤独・孤立対策推進法」を根拠に、内閣府が毎年実施する全国調査。 本年度(令和6年)は第4回目にあたり、16歳以上約2万人を無作為抽出して調査した(有効回答率54.4%)。

孤独・孤立対策 政策の流れ

2021年2月
孤独・孤立担当大臣を新設
G7諸国で英国に次いで2例目。コロナ禍の孤立問題を受けた対応
2021年〜
孤独・孤立の実態把握に関する全国調査 開始
毎年継続実施。令和6年で第4回
2023年5月
孤独・孤立対策推進法 成立
国・地方・民間の連携推進体制を法的に位置づけ
2024年4月
孤独・孤立対策推進法 施行
孤独・孤立対策推進本部(本部長:内閣総理大臣)設置
2024年6月
重点計画 策定・決定
4本の政策柱を設定(啓発・相談支援・居場所・NPO連携)
2025年4月
令和6年度調査結果 公表
本レポートの分析対象データ
🌐 内閣府 孤独・孤立対策推進法

重点計画 4つの政策柱

🔔 柱1:声を上げやすい社会
孤独・孤立に至っても支援を求める声を上げやすい社会を実現する。 スティグマや恥じらいを取り除く啓発活動の推進。
🤝 柱2:切れ目のない相談支援
状況に合わせた相談支援へのアクセス改善。 複数機関の連携による包括的支援体制の整備。
🏘 柱3:居場所・つながりづくり
見守り・交流の場や居場所の確保。 地域コミュニティの再生とオンライン活用の組み合わせ。
🏛 柱4:NPO等との官民連携
孤独・孤立対策に取り組むNPO等の活動を支援。 官・民・NPO等の多機関連携を強化する。
🌐 内閣府 重点計画

2 孤独感の全体像

本調査では2つの異なる方法で孤独感を測定している。 UCLA孤独感尺度(3項目・3〜12点)と直接質問(5段階)の結果を比較すると、 約26ポイントの乖離が生じており、自己申告バイアスの存在が示唆される。

孤独感の年次推移(2021〜2024年)

孤独感保有率の経年変化(令和3〜6年)
📊 内閣府 全国調査 令和3〜6年度 / 🌐 公表資料より推計
データ

2つの測定方法による孤独感分布

UCLA孤独感尺度(3〜12点)
📊 シート1-1 n=10,871
データ
直接質問(5段階)
📊 シート1-1 n=10,871
データ
🔍 重要な知見:自己申告バイアス(約26ptの乖離)
UCLA尺度(45.7%)と直接質問(19.7%)の約26ポイントの差は、日本社会における 「孤独を認めにくい・自覚しにくい」文化的傾向を示している可能性がある。 真の孤独感保有率は直接質問よりUCLA尺度の値に近い可能性があり、 支援制度設計においては尺度選択に留意が必要である。
🌐 内閣府 令和6年度調査結果ポイント

都市規模別の孤独感分布

都市規模別 孤独感分布(UCLA孤独感尺度)
📊 シート1-1 都市規模別クロス集計
データ
都市規模別孤独感

3 孤独感の属性別分析

性別・年齢・世帯構成・職業・年収・社会的つながりといった多様な属性から孤独感の高リスク層を特定する。 特に若年層(20〜30代)での高率は、従来の「高齢者=孤独」というイメージを覆す重要な発見である。

3.1 性別・年齢階級別の孤独感

性×年齢階級別 孤独感保有率ヒートマップ(UCLA7点以上)
📊 シート1-2 クロス集計
データ
性×年齢別孤独感ヒートマップ
年齢別「しばしば/常にある」率(概算)
🌐 令和6年度調査結果ポイント参照
Web
⚡ 重要知見:若者の孤独感が高い
令和6年度調査では、孤独感が「しばしば・常にある」割合は 20代・30代で特に高い(男性:20代・30代・50〜60代、女性:20代・30代で高率)。 高齢者特有の問題ではなく、若い働き世代での対策が急務である。

3.2 世帯構成・職業・年収別の孤独感

世帯構成別(UCLA7点以上)
📊 シート1-5
データ
世帯構成別孤独感
職業別(UCLA7点以上)
📊 シート1-7
データ
職業別孤独感
世帯年収別(UCLA7点以上)
📊 シート1-8
データ
年収別孤独感
単身
世帯構成で
最も孤独感が高い
低収入
年収と孤独感は
逆相関(高収入→低率)
企業調査
20代社員の31.9%
孤独感を「深刻」と回答
🌐 野村総合研究所「今こそ企業が向き合うべき孤独・孤立」2025年5月

3.3 社会的つながりと孤独感の関係

頼れる人・相談相手の有無別 孤独感分布
📊 シート1-18, 1-19
データ
社会的つながり別孤独感
🔴 核心的知見:サポートの有無が孤独感の最大の規定因子
頼れる人・相談相手がいない層では、いる層と比較して孤独感(UCLA高スコア)が 2〜3倍以上に上昇する傾向がある。 インフォーマルサポートの有無が孤独感に最も直結している。
📖 研究知見:孤独と喫煙同等のリスク
Holt-Lunstad et al.(2015年)の大規模メタ分析(308研究・308万人)では、 社会的孤立が早期死亡リスクを29%上昇させると報告されている。 孤独は「1日15本の喫煙と同等」の健康リスクを持つとされる。

4 孤独感の継続期間とライフイベント

孤独感がどの程度継続しているか、また何をきっかけに孤独感が高まったかを分析する。 慢性的な孤独への対処と、移行期(ライフイベント)への予防的支援の重要性が示される。

孤独感の継続期間分布(全体)
📊 シート1-29
データ
孤独感の継続期間
孤独感に強く影響した出来事(複数回答・全体)
📊 シート1-37
データ
孤独感に影響したライフイベント
💡 政策含意:ライフ移行期への予防的支援
家族との死別・一人暮らし開始・転職・退職など、特定のライフイベントが孤独感増大の トリガーとなっている。これらは支援介入のタイミングとして捉えられ、 転換点に合わせたプロアクティブな相談支援(例:転職支援窓口での孤独相談、死別後の グリーフケア)が有効な可能性がある。

5 社会的交流の実態

非同居者とのコミュニケーション頻度を「直接会う」「電話・ビデオ」「SNS・メール」の 3手段で分析する。特にリアルなコミュニケーション機会の不足と孤独感の強い関連が注目点となる。

コミュニケーション手段別「全くない」率(全体)
📊 シート2-1 n=10,871
データ
コミュニケーション手段別全くない率
孤独感スコア別「直接会って話す:全くない」率
📊 シート2-18
データ
孤独感×コミュニケーション頻度
📱 新知見(令和6年度初調査):スマートフォン使用時間と孤独感
スマートフォン使用時間が「1日8時間以上」の層では、孤独感が「しばしば・常にある」割合が 13.3%と、使用時間が短い層に比べて顕著に高い(7〜8時間: 9.5%)。 ただし因果関係の方向性(孤独→スマホ多用 vs スマホ多用→孤独)は横断研究では特定できない点に留意。
🌐 内閣府 令和6年度調査結果ポイント
🔬 研究知見:対面コミュニケーションの不代替性
オックスフォード大学 Dunbar 教授(2019年)の研究では、「対面コミュニケーションが オキシトシン分泌を促し孤独感を軽減する主要手段」であり、電話・テキストはその代替として 機能しにくいことが示されている。SNSの高利用は孤独感の解消に限定的な効果しかない可能性がある。
出典:Dunbar, R.I.M. et al. (2019), "Computer-mediated communication accelerates the pace of negotiation in dyadic conversations"

6 社会参加の実態

社会活動への参加状況を分析する。過半数が「不参加」という実態と、 孤独感が高いほど社会参加率が低いという「悪循環」の存在が重要な発見である。

社会活動参加状況(複数回答・全体)
📊 シート3-1 n=10,871
データ
社会活動参加状況
孤独感スコア別 社会参加率
📊 シート3-17
データ
孤独感別社会参加状況

最近1週間の外出目的

外出目的の分布(複数回答・全体)
📊 シート3-20
データ
外出目的
🌀 構造的課題:孤独の悪循環
孤独感が高い人ほど社会活動に参加しない、社会参加が少ないことでさらに孤独感が高まるという 「孤独の悪循環(Loneliness Spiral)」が示されている。 この悪循環を断ち切るには、参加ハードルが低い「居場所」や「通いの場」の創設が有効である。
🌐 Population Research and Policy Review "Loneliness at Older Ages in Japan" (2025)

7 各種支援の実態

行政・NPO等からのフォーマルサポートと、家族・友人等のインフォーマルサポートの実態を分析する。 支援受給率わずか約7%という「支援の空白」と、その原因となる情報アクセス障壁が課題の核心である。
※ファイル04対象者はn=8,084(一定条件による絞り込み)

7.1 行政・NPO等からの支援状況と「受けていない理由」

行政・NPO等からの支援受領状況(都市規模別)
📊 シート4-1 n=8,084
データ
行政NPO支援状況
支援を「受けていない理由」(複数回答・全体)
📊 シート4-24 支援を受けていない者対象
データ
支援受けていない理由

7.2 社会的サポートの有無と日常の不安・悩み

相談相手・気軽に話せる相手の有無(全体)
📊 シート4-52, 4-61 n=8,084
データ
相談相手等の有無
日常生活における不安・悩みの内容(複数回答)
📊 シート4-79 n=8,084
データ
日常の不安・悩み

7.3 社会的サポート3指標の複合状況(完全孤立指標)

頼れる人 × 相談相手 × 気軽に話せる相手の組み合わせ
📊 シート4-99 n=8,084
データ
社会的サポート複合指標
社会的サポート保有状況(概要)
📊 シート4-99(推計)
データ
🚨 最重要知見:完全孤立者の推計規模
「頼れる人・相談相手・気軽に話せる相手の3つ全てがいない」 完全孤立者が3.7% 存在する。
日本の16歳以上人口(約1.1億人)に換算すると 推計約407万人が完全孤立状態にある可能性がある。 これは単一機関では対応不可能な規模であり、多機関連携が不可欠である。
🔴 最新統計(2024年):孤独死の深刻化
警察庁による2024年の初めての集計では、一人暮らしの自宅で亡くなった人は 年間7万6,020人(うち65歳以上5万8,044人・76.4%)。 「死後8日以上経て発見」された孤立死は全年齢で2万1,856人に上る。 孤独・孤立問題が最終的に「孤独死」という社会的損失に帰結していることを示す。
🌐 日本経済新聞「65歳以上の孤独死5.8万人 24年、警察庁が初集計」2025年4月

8 孤独感と生活満足度・健康状態

孤独感は健康状態・生活満足度と強く関連しており、 「孤独→不健康・生活不満→さらなる孤立」という悪循環が示される。 孤独問題への対処は医療・福祉コストの抑制にも直結する社会投資的課題である。

健康状態・生活満足度別 孤独感(UCLA7点以上)率
📊 シート1-25, 1-26
データ
健康状態・生活満足度別孤独感
孤独感(UCLA尺度)区分別 現在の生活満足度
📊 シート1-47
データ
孤独感×生活満足度
🌍 国際的根拠:孤独は「社会的決定要因」
WHO「健康の社会的決定要因フレームワーク(2003年)」では、社会的孤立が 精神的健康と生活の質(QoL)の主要決定因子であることが示されている。 孤独問題への早期介入は、うつ病・認知症等の医療コスト抑制にも効果的な 「予防的社会投資」として位置づけられる。
出典:WHO, "Social determinants of health: the solid facts", 2003

9 総合考察と政策的示唆

データ分析と最新の政策・研究動向を踏まえ、日本の孤独・孤立問題への対策として 特に重要な5つの施策の方向性を提示する。

主要知見サマリー

テーマ 主な知見 数値
孤独感の規模 UCLA7点以上の孤独感あり。直接質問との大きな乖離(自己申告バイアス) 45.7% vs 19.7%
高リスク属性 単身世帯・無職・低年収・頼れる人なし層で高率 複合因子
若者問題 20〜30代で孤独感が高く、高齢者特有の問題ではない 20〜30代に集中
社会参加 過半数が「特に参加はしていない」。孤独感高層ほど参加率が低い悪循環 50.6%が不参加
フォーマル支援 行政・NPO支援の受給率はわずか約7%。情報アクセス障壁が主因 約7%のみ受給
完全孤立者 3つのサポートすべてない層が3.7%。推計約407万人 3.7%(≒407万人)
孤独死 2024年に7.6万人が一人暮らしの自宅で死亡 76,020人/年
生活満足度 孤独感高スコア層で生活満足度・健康状態が著しく低い 明確な逆相関

5つの政策的示唆

1
「孤独の自覚」を促す社会啓発
UCLA尺度と直接質問の乖離(約26pt)は、孤独を自覚しにくい・認めにくい文化的課題を示す。 「孤独は恥ではない」という社会的認識の変革と、孤独感スクリーニングツールの普及が必要である。
2
情報アクセス障壁の解消(プッシュ型支援)
「支援の存在を知らない」「受け方がわからない」が支援利用の主障壁。 SNS活用・医療機関・行政窓口からのプッシュ型アウトリーチ情報提供の強化が急務。
3
ライフ移行期への予防的・重点支援
死別・一人暮らし開始・離職など特定ライフイベントが孤独感のトリガー。 これらの転換点を支援介入タイミングとして設計し、プロアクティブな相談体制を整備。
4
若者・働き世代の孤立対策
20〜30代の孤独感の高さは、就労支援・ピアサポート・コミュニティ形成からのアプローチが必要。 企業によるメンタルヘルスケアや職場コミュニティ醸成も重要な役割を担う。
5
複合孤立者(推計407万人)への重層支援体制の構築
頼れる人・相談相手・気軽に話せる相手がすべていない完全孤立者(3.7%・推計407万人)には、 単一機関での対応は困難。多機関連携型の重層的支援体制(アウトリーチ→つなぎ→定着支援)の整備が不可欠。 内閣府の孤独・孤立対策地域協議会を活用した地域連携モデルの推進が期待される。

データの限界・留意点

限界・留意点内容
インターネット調査バイアス 最も孤立した層(ネット非利用者・高齢単身者等)が過小評価される可能性がある
横断研究の限界 因果関係の特定には縦断研究が必要(例:スマホ多用→孤独 vs 孤独→スマホ多用)
対象者差異 ファイル04(支援調査)はn=8,084と他ファイルのn=10,871と異なる条件で絞り込まれている
地域粒度の限界 都道府県別・市区町村別の詳細分析には別途データが必要

📚 参考文献・引用資料

📊 一次資料(本データの出典)
🏛 政府・政策資料(🌐 Web由来)
🔬 学術・研究資料(🌐 Web由来)
  • 📖
    Holt-Lunstad J. et al. (2015). "Loneliness and Social Isolation as Risk Factors for Mortality" Perspectives on Psychological Science. — 孤立が死亡リスクを29%上昇
  • 📖
    Dunbar R.I.M. et al. (2019). "Computer-mediated communication accelerates the pace of negotiation" — 対面コミュニケーションの不代替性
  • 📖
    WHO "Social determinants of health: the solid facts" (2003) — 健康の社会的決定要因フレームワーク
  • 📖
    Vivek Murthy, "Together: The Healing Power of Human Connection" (2020) — 孤独と公衆衛生