内閣官房 孤独孤立対策担当室 / 令和6年度(2024年度)全国調査

孤独・孤立対策に関する実態調査
分析レポート

全国 10,871 人の調査データから見える日本の孤独・孤立の実態

分析対象: 令和6年度(2024年度)集計データ / 分析日: 2026年3月13日

6.5%
UCLA高スコア
(常に孤独感あり)
45.7%
何らかの孤独感
(UCLA中〜高スコア)
7.4%
行政等の支援
受給率
10,871
有効回答数
(孤独感調査)
1

調査概要と測定方法

📋

政策的背景

日本政府は2021年に「孤独・孤立対策担当大臣」を設置(英国に次ぎ世界第2番目)。2023年制定・2024年4月施行の「孤独・孤立対策推進法」に基づき、143施策を盛り込んだ重点計画が策定されている。令和6年度実態調査は政策効果の把握と今後の対策立案を目的に実施された。

測定方法

測定法内容尺度
UCLA孤独感尺度 「仲間はずれに感じる」「孤立していると感じる」「人と切り離されていると感じる」の3問合計 3〜12点
直接質問 「孤独を感じることがあるか」を直接問う 5段階
調査概要内容
調査主体内閣官房 孤独孤立対策担当室
調査対象全国の一般市民(16歳以上)
有効回答数10,871人(孤独感)/ 8,084人(各種支援)
調査年度令和6年度(2024年度)

UCLA孤独感尺度は米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校が開発(Russell, 1996)した国際標準の測定ツール。日本語版3項目版はCronbach's α = 0.89以上と高い内的一貫性が確認されており、内閣府の全国調査でも採用されている。注2

UCLA孤独感スコア分布(全体)

令和6年度 UCLA孤独感スコア 全体分布
6.5%
高スコア
(10-12点)
39.2%
中スコア
(7-9点)
38.0%
低スコア
(4-6点)
2

孤独感の実態

2.1 全体の孤独感分布(都市規模別)

UCLA孤独感尺度 都市規模別分布
図1: UCLA孤独感尺度 都市規模別分布 | 📊 出典: 孤独・孤立対策に関する実態調査 令和6年度 第1-1表

都市規模による差は±1.6pt 程度と小さく(高スコア率5.8〜7.4%)、孤独感は特定の地域に偏らない全国的な課題であることが確認された。政令市・特別区でやや高め(7.4%)が観測されており、都市部の匿名性・繋がりの希薄化が一因として考えられる。

2.2 年齢別の孤独感

年齢別孤独感
図2: 年齢別孤独感(UCLA + 直接質問) | 📊 出典: 第1-2表
年齢別 UCLA高スコア率(インタラクティブ)
年齢層 UCLA高スコア(10-12点) 直接質問「しばしばある」 評価
16-19歳4.2%3.3%
20代9.1%7.4%
30代9.5%6.0%最高
40代7.2%4.3%
50代7.6%5.1%
60代6.7%4.4%
70代3.9%2.5%最低
全体6.5%4.3%

最重要発見:20〜30代の孤独感が全年齢で最高水準。 UCLA高スコアは20代9.1%、30代9.5%と全体平均(6.5%)の約1.5倍。就職・転居・人間関係の断絶等のライフイベントが集中する時期と重なる。野村総合研究所の2024年調査でも、20代社員の31.9%が「深刻な孤独感」を抱えていることが報告されている。注3

2.3 世帯構成別の孤独感

世帯構成別孤独感
図3: 世帯構成別孤独感 | 📊 出典: 第1-5表

ひとり世帯の孤独感が最も深刻(UCLA高スコア9.9%)。 夫婦のみ世帯(5.0%)が最低であり、安定したパートナーシップが孤独感の保護因子として機能していることが示唆される。

2.4 就業状況別の孤独感

就業状況別孤独感
図4: 就業状況別孤独感 | 📊 出典: 第1-7表

求職中(仕事を探している)の18.6%は全カテゴリで突出して高く、全体平均の約2.9倍。 就業不安定・経済的不安が孤独感の強力な促進要因。一方、会社役員(0.9%)は最低であり、社会的地位と経済的安定が孤独感の緩衝として機能している可能性がある。

2.5 社会参加有無別の孤独感(クロス分析)

社会参加有無別孤独感
図5: 社会参加有無別孤独感 | 📊 出典: 第1-17表

社会活動に参加している群のUCLA高スコアは3.4%に対し、参加していない群は9.5%(差:+6.1pt)。孤独感と社会参加の間に強い関連がある。ただし、因果の方向性(孤独だから参加しないのか、参加しないから孤独になるのか)は横断データのみからは確定できない。

3

社会的交流の実態

3.1 コミュニケーション手段別の頻度分布

コミュニケーション頻度 全体
図6: コミュニケーション頻度(全体) | 📊 出典: 第2-1表
20.9%
SNS/メール
週4-5回以上(最多)
9.3%
直接会う
「全くない」

③SNS・電子メールが最も高頻度(週4-5回以上20.9%)で現代のコミュニケーションの主役となっている。直接会っての交流で「全くない」が9.3%と最も高く、対面交流の機会が失われた層の存在を示している。

3.2 年齢別コミュニケーション「全くない」率

年齢別コミュニケーション全くない率
図7: 年齢別コミュニケーション「全くない」率 | 📊 出典: 第2-2表

70代では直接会っての「全くない」率が16.5%(16-19歳の4.6%の3.6倍)と大幅に上昇。70代のSNS「全くない」率も高く、デジタルデバイドが高齢者のコミュニケーション手段を限定している。中年層(40-50代)では電話での「全くない」率が比較的高い傾向があり、仕事中心の生活スタイルや家族・友人との電話コミュニケーションの減少を反映していると考えられる。

4

社会参加の実態

4.1 社会活動への参加状況

社会参加活動種別 全体
図8: 社会参加活動種別(全体) | 📊 出典: 第3-1表
46.6%
何らかの活動に
参加している
50.6%
特に参加なし
(過半数)
32.0%
スポーツ・趣味・娯楽
(最多活動)

4.2 年齢別社会参加率の推移

年齢別社会参加率
図9: 年齢別社会参加率 | 📊 出典: 第3-2表

20代の「特に参加なし」率が63.2%と高く、若年層の社会参加率の低さが孤独感の高さと対応している。40代以降では参加率が回復し、70代では53.1%と高水準となる。

4.3 孤独感レベル別の社会参加率

孤独感×社会参加率クロス分析
図10: 孤独感×社会参加率 クロス分析 | 📊 出典: 第3-17表
UCLA孤独感スコア別 社会参加率(インタラクティブ)
UCLA孤独感スコア社会参加率
10-12点(常にある)24.3%
7-9点(時々ある)41.2%
4-6点(ほとんどない)52.2%
3点(決してない)58.2%

UCLA孤独感が最高(10-12点)の層では社会参加率が24.3%と全体平均(46.6%)の約半分に低下。孤独感と社会参加の間には明確な逆相関が確認される。

5

行政・NPO等からの支援状況

行政支援受給状況
図11: 行政支援受給状況(都市規模別) | 📊 出典: 第4-1表
7.4%
支援受給率(全体)
92.6%
公的支援を受けていない
10.7%
町村(最高値)
6.3%
20万人以上の都市
(最低値)

行政機関・NPO等からの支援を「受けている」のはわずか7.4%。約9割以上が公的支援を受けていない。都市部での支援アクセスのミスマッチが深刻な課題となっている。2021年の緊急対策として政府は約60億円の孤独・孤立対策NPO支援を実施したが、支援の届かない層が依然として多い。注4

6

生活満足度と孤独感の関係

生活満足度×孤独感
図12: 生活満足度×孤独感分布 | 📊 出典: 第1-26表
生活満足度別 UCLA高スコア率(インタラクティブ)
生活満足度 UCLA高スコア(10-12点) 全体(6.5%)比
満足している1.0%×0.15
まあ満足している2.3%×0.35
どちらともいえない8.2%×1.26
やや不満である13.8%×2.12
不満である31.5%×4.85

「不満である」群のUCLA高スコア31.5%は「満足している」群(1.0%)の約31倍。生活満足度と孤独感は双方向の強い関連を持ち、互いに影響し合う構造が示唆される。

7

総合考察

7.1 孤独感に関連する主要因子(影響度順)

  • 1
    生活満足度
    「不満」群と「満足」群の差:+30.5pt(最大の格差)
  • 2
    就業状況
    求職中と全体平均の差:+12.1pt(就業安定の重要性)
  • 3
    社会参加有無
    非参加群と参加群の差:+6.1pt
  • 4
    世帯構成
    ひとり世帯と全体の差:+3.4pt
  • 5
    年齢(30代最高)
    30代が最高(9.5%)、70代が最低(3.9%)。範囲5.6pt
  • 6
    都市規模
    差は±1.6ptで影響は小さい

7.2 孤独・孤立の負のサイクル

低社会参加 / 経済的不安定
孤独感の増加
生活満足度の低下
社会参加の障壁がさらに増加
↺ このサイクルが繰り返される

特に求職中の若年層・単身世帯では、経済的不安定・社会的つながりの希薄さが複合的に作用している可能性が高い。

7.3 政策的示唆

若年層(20-30代)
課題: 孤独感が全年齢最高(9.1〜9.5%)
キャリア支援との連動・ソーシャルスペースの提供
求職中の人
課題: 孤独感が突出(18.6%)
ハローワーク等でのメンタルサポート強化
単身世帯
課題: UCLA高スコア9.9%と高水準
地域コミュニティとの接続支援
高齢単身者
課題: 直接交流「全くない」16.5%
訪問支援・デジタル活用支援の充実
📌

支援非受給者対策(最重要課題)

92.6%が支援を受けていない現状を改善するために、支援情報の周知・ワンストップ相談窓口の充実が急務。2024年4月施行の「孤独・孤立対策推進法」に基づく143施策が着実に実施される必要がある。国際比較では日本の孤独感の頻度は英米(22〜23%)より低い(9%)が、慢性的孤独の割合が高い(35%超が10年以上)という特徴がある。注5

7.4 データの限界

  • クロス集計データのみのため、因果関係の確認はできない
  • 調査時点のスナップショットであり、年度比較には別ファイルのデータが必要
  • 「無回答」層の特性が不明であり、選択バイアスの可能性がある
  • オンライン調査の限界(デジタルデバイドを抱える高齢者の過少代表の可能性)

参考資料

📊 データ出典

  • 内閣官房 孤独孤立対策担当室「孤独・孤立対策に関する実態調査 令和6年度(2024年度)」
  • 分析ファイル: data03/01.孤独感に関する集計表(r6)20250423.xlsx 他
  • 有効回答数: 孤独感 n=10,871 / 各種支援 n=8,084