Welfare Administrative Report · Ministry of Health, Labour and Welfare Japan · 2024

令和6年度(2024年度)
相談支援利用状況 分析レポート

厚生労働省「令和6年度 福祉行政報告例」第1表・第18表をもとに、 市町村における障害者・障害児への相談支援利用状況を多角的に分析する。
対象:47都道府県・20指定都市・62中核市 障害の種類(重複計上)別クロス集計

相談支援実人員(総数)
全国市町村ベース
障害者+障害児の合計
うち 障害者(成人)
全体の 81.5%
精神障害が最多
うち 障害児
全体の 18.5%
発達障害が断然多い
精神障害(最多・重複計上)
相談支援障害者数の 30.5%
障害種別で最大
出典: 厚生労働省 令和6年度 福祉行政報告例 第1表・第18表 障害の種類は重複計上(1人が複数種別にカウント) 指定都市・中核市は都道府県集計から別掲
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Section 01 · National Overview

全国集計の概観

第18表より。全国の相談支援利用者を「障害者(成人)」「障害児」「総数」の3区分でまとめた要約。 相談支援障害者数は重複計上のため実人員(1,495,941人)より大きい(1,898,500人)。

ℹ️
重複計上について: 「相談支援障害者数」は、1人の利用者が複数の障害種別に該当する場合に複数回カウントされます。 実人員(1,495,941人)に対し相談支援障害者数(1,898,500人)の比率は約1.27倍。 実際の利用者数は実人員ベースで把握する必要があります。
相談支援実人員の内訳 — 障害者 vs 障害児
総数: 1,495,941人 第18表より
障害者(成人)
1,219,410
81.5%
障害児
276,531
18.5%
障害の種類別 相談支援障害者数(総数・重複計上)
相談支援障害者数 計: 1,898,500人
30.5%
精神障害(最多)
579,052人。地域移行支援の進展と精神疾患の有病率上昇が背景。
26.4%
知的障害(第2位)
500,562人。障害者・障害児ともに高い比率を占める。
24.6%
身体障害(第3位)
466,470人。成人に多く、障害者の27.7%を占める。
10.0%
発達障害(急増中)
189,784人。障害児では34.9%と最多。今後の成人移行が課題。
全国集計 数値サマリー(第18表)
単位: 人 障害の種類は重複計上
区分 実人員 総数(計) 身体障害 重症心身障害 知的障害 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 その他
総数 1,495,941 1,898,500 466,47028,163500,562 579,052189,78415,402119,067
障害者 1,219,410 1,569,558 435,52119,463387,619 566,53374,93415,02270,466
障害児 276,531 328,942 30,9498,700112,943 12,519114,85038048,601
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Section 02 · Adult vs Child

障害者(成人)と障害児の比較

同じ「相談支援利用者」でも、成人と子どもでは障害の種類の構成が大きく異なる。 障害者は精神障害中心、障害児は発達障害・知的障害中心という明確な差がある。

障害の種類別構成比の比較 — 障害者 vs 障害児
各グループ内での割合(%)
障害者(成人) — 1,219,410人
精神障害
36.1%
身体障害
27.7%
知的障害
24.7%
発達障害
4.8%
比較
障害児 — 276,531人
発達障害
34.9%
知的障害
34.3%
身体障害
9.4%
精神障害
3.8%
障害者(成人)の特徴
精神障害が成人相談支援障害者数の36.1%を占め最多。 精神科病院からの地域移行が進み、外来・訪問系の相談支援ニーズが高い。 次いで身体障害(27.7%)・知的障害(24.7%)。
障害児の特徴
発達障害が34.9%・知的障害が34.3%と、 この2障害で約69%を占める。早期発見・療育支援の充実により、 幼少期からの相談支援利用が増加している。
発達障害の成人移行が今後の課題
障害児で34.9%を占める発達障害が、障害者(成人)では4.8%にとどまる。 現在の障害児世代が成人になるにつれ、成人における発達障害の相談支援ニーズが急増することが確実視される。
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Section 03 · Prefecture Analysis

都道府県別分析

47都道府県の相談支援利用状況を実人員・障害種別構成・地域プロファイルから多角的に分析する。 ※東京都(377,531人)は他と桁が異なるため、ランキングでは参考値として別掲する。

⚠️
東京都(377,531人)について
東京都の相談支援実人員(377,531人)は全国の約25.2%を占め、 2位の千葉県(56,264人)・北海道(56,528人)の約6.7倍。 東京の人口は全国の約11%に過ぎないことと比較すると突出した比率であり、 精神科医療機関の高い集積度・相談支援体制の整備状況・受診率の差が反映されていると考えられる。 特に身体障害(205,162人)が全国合計(466,470人)の44%を東京単独で占める点が顕著。
都道府県別 相談支援実人員ランキング(東京都除く)
東京都は377,531人で別掲 · 単位: 人
相談支援実人員 上位・下位
東京都を除いたランキング
▲ 上位5都道府県
1
千葉県
56,264人
2
北海道
56,528人
3
愛知県
55,420人
4
埼玉県
35,252人
5
兵庫県
29,002人
▼ 下位5都道府県
鳥取県
3,653人
富山県
3,784人
高知県
3,912人
福井県
4,195人
青森県
4,998人
東京への集中
東京都だけで全国の25.2%を占める。人口比(約11%)の2倍以上。 精神科医療機関の集積・生活困窮者支援との連携・外来通院率の高さが要因として考えられる。
地方と大都市圏の差
上位(千葉・北海道・愛知)と下位(鳥取・富山・高知)では10〜15倍の差がある。 人口規模の差だけでなく、相談支援体制の整備状況・周知度・アクセスのしやすさが大きく影響している。
島根県・岡山県の特徴
島根県(13,695人)・岡山県(8,245人)は人口規模に対して相談支援利用者が多い。 島根では知的障害・精神障害の比率が高く、岡山では発達障害の比率(3,908人)が突出して高い。
都道府県別 障害の種類別構成比(精神障害率上位20都道府県)
相談支援障害者数を100%として障害種別の構成比を比較
💡
精神障害比率が高い都道府県の傾向
精神障害の構成比が高い都道府県では、精神科病院からの地域移行支援が進んでいるか、 そもそも精神疾患の有病率が高い地域である可能性が高い。 一方で知的障害・身体障害の比率が相対的に高い都道府県では、 精神障害者向け相談支援の整備が今後の課題となる可能性がある。
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Section 04 · Designated & Core Cities

指定都市・中核市別分析

20指定都市(政令市)と62中核市は都道府県集計から別掲。 政令市間では実人員 vs 相談支援障害者数(重複計上)に大きな差があり、 横浜市・相模原市のデータが特異な値を示している。

指定都市別 実人員 vs 相談支援障害者数(重複計上)
実人員(緑)と相談支援障害者数(橙)の差異が重複計上の度合いを示す
📊
横浜市の特異なデータ(重複率 4.20倍)
横浜市は実人員41,417人に対し相談支援障害者数174,094人(重複率4.20倍)と、 他の指定都市(平均約1.2倍)と比較して突出して高い。 これは横浜市において複数の障害種別を持つ利用者の把握が精緻に行われていることを示すと考えられる。 一方で相模原市は実人員39,122人=相談支援障害者数39,122人(重複率1.00倍)と重複計上ゼロとなっており、 計上方法の差異として確認が必要なデータ特性がある。
指定都市 重複率ランキング
相談支援障害者数 ÷ 実人員(1.0 = 重複なし)
都市実人員障害者数重複率
神奈川県 横浜市41,417174,0944.20×
宮城県 仙台市19,26022,8961.19×
静岡県 静岡市6,3207,3801.17×
福岡県 福岡市8,0709,4041.17×
愛知県 名古屋市10,49611,2761.07×
大阪府 堺市16,90717,1701.02×
神奈川県 相模原市39,12239,1221.00×
神奈川県 川崎市4,3824,3821.00×
🏙️
仙台市の突出(19,260人)
指定都市の中で横浜市・相模原市に次ぐ第3位。 仙台市は東日本大震災(2011年)後に精神的支援ニーズが増大し、 相談支援体制が整備された背景が影響している可能性がある。
📍
堺市(16,907人)の高比率
堺市は人口規模(約83万人)に対して相談支援実人員が多く、 相談支援事業所の整備が進んでいることを示す。 大阪府全体の相談支援ニーズの高さとも関連している。
中核市別 相談支援実人員 上位20市
62中核市のうち実人員上位20市 · 単位: 人
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奈良市・長野市が突出
奈良市(15,337人)・長野市(15,064人)は中核市の中で断然トップ。 長野市は「社会的養護・障害福祉の先進地域」として整備が進んでいる。 長崎市(12,291人)も人口規模に対して高く、离島・農村を含む広域支援体制の存在が示唆される。
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Section 05 · Cross Analysis

障害の種類別クロス分析

障害の種類ごとに深掘り。全国・東京都・長崎県のプロファイルをレーダーチャートで比較するとともに、 各障害種別の特性と政策的課題を整理する。

障害種別プロファイル比較(レーダーチャート)
全国 vs 東京都 vs 長崎県 — 各グループ内での障害種別構成比(%)
東京都の特徴
身体障害(44.9%)・精神障害(27.1%)が全国平均より大幅に高い。 東京の精神科医療・リハビリ医療の集積が相談支援数に直結している。
長崎県の特徴
身体障害(29.5%)が高く、知的障害(14.3%)が全国より低め。 離島・半島部が多い地形的特性から、身体的障害を抱えた高齢者の相談支援が多い可能性。
精神障害
579,052
障害者の36.1%・最多
成人の最多障害種別。地域移行支援・アウトリーチ支援の充実が今後も必要。 障害者基本計画における「精神科病院からの地域移行」の進捗が利用者数に直結。
発達障害
189,784
障害児の34.9%・最多
障害児での比率が突出して高く、現在の子ども世代が成人になると 障害者領域の発達障害ニーズが急増することが予測される。
知的障害
500,562
障害者・障害児ともに高比率
成人(24.7%)・子ども(34.3%)ともに高比率。 グループホーム・就労継続支援との組み合わせによる総合的支援が重要。
身体障害
466,470
障害者の27.7%
東京都への集中が特に顕著(全国の44%)。 在宅医療・訪問リハビリとの連携が不可欠で、地域の整備状況差が大きい。
重症心身障害
28,163
障害児の2.6%
絶対数は少ないが、医療的ケアの複雑性が高い。 「親亡き後」を見据えた成人移行支援と医療・福祉の一体的提供体制が急務。
高次脳機能障害
15,402
全体の0.8%・最少
絶対数は最少だが地域差が大きく、専門的な支援人材が偏在している。 脳卒中・交通事故後の中途障害者の社会復帰支援が課題。
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Section 06 · Synthesis

総合考察

本調査から得られた主要知見を整理し、政策的示唆と今後の課題を提示する。

主要知見サマリー
分析テーマ別の主な発見事項(令和6年度)
分析テーマ 主な知見
全国規模 相談支援実人員149.6万人。精神障害が最多(30.5%)、障害児は18.5%。重複計上比率は約1.27倍。
障害者の特徴 精神障害(36.1%)>身体障害(27.7%)>知的障害(24.7%)の順。地域移行が進む精神障害が突出。
障害児の特徴 発達障害(34.9%)>知的障害(34.3%)で合計約69%。早期発見・療育支援の充実を反映。
成人移行問題 障害児の発達障害34.9%に対し、障害者の発達障害4.8%。今後の成人移行で発達障害ニーズが急増する見込み。
都道府県差 東京都が全国の25.2%を占め突出。上位・下位都道府県で実人員に10〜15倍の差(人口補正前)。
指定都市 横浜市の重複率4.20倍が特異。仙台市(19,260人)が都市規模を超えた相談支援利用数。
中核市 奈良市(15,337人)・長野市(15,064人)が突出。62市間で実人員に大きなばらつき。
地域格差 相談支援の利用状況は人口規模だけでなく、体制整備・周知度・アクセシビリティに大きく依存。

政策的示唆

発達障害の成人移行への備え(最重要課題)
  • 現在障害児支援を受けている発達障害の子ども世代が成人になると、成人領域の相談支援ニーズが急増する。今から移行支援体制を整備することが必須。
  • 18歳前後の「はざま問題」——児童福祉から障害者福祉への切れ目のないサービス移行体制の強化。
  • 就労移行支援・グループホーム・自立生活援助の量的・質的充実。
精神障害者の地域生活支援の継続・強化
  • 精神科病院からの地域移行後の「住まい・就労・社会参加」のトータルサポート体制が引き続き最重要。
  • アウトリーチ支援(ACT等)・ピアサポートの活用により、相談支援専門員の負荷分散を図る。
  • 措置入院・医療保護入院患者の退院後支援計画との連動強化。
地域格差の是正と相談支援専門員の育成
  • 都道府県・市町村間で相談支援利用率に大きな差がある。相談支援専門員の配置偏在が根本原因の一つ。
  • ICT・オンライン相談の活用により地方・中山間地域のアクセシビリティを改善。
  • 相談支援専門員の処遇改善・キャリアパスの整備により人材確保を促進。
重症心身障害・高次脳機能障害への専門支援
  • 絶対数は少ないが支援の複雑性が高い。専門性を持つ相談支援事業所の地域偏在を是正する必要がある。
  • 医療的ケア児・者(NICU退院後の在宅移行等)への相談支援の一体的提供体制の整備。
  • 高次脳機能障害は脳卒中・事故後の中途障害者も多く、医療リハとの切れ目のない連携が必要。
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データの限界と留意点
重複計上:相談支援障害者数は1人が複数障害種別にカウントされるため実人員と乖離する。実人員ベースでの把握が基本。
人口補正なし:本分析では人口10万人当たりの比率等の補正を行っていない。絶対数の比較には人口規模の影響が強く出る。
別掲の取扱い:指定都市・中核市は都道府県集計から独立して別掲されており、合算すると二重計上となる点に注意。
調査時点:令和6年度(2024年度)の年度分報告。令和5年度以前との比較は別途データが必要。
横浜市データ:重複率4.20倍の特異値については、計上方法の差異として確認を推奨。